English title: 

それから俺は目の前の食卓に飛び散った俺の脳みそを両手で掻きあつめるそぶりをしながら,ゆっくりと舌の先で俺の左の頬骨から右の頬骨へと突き抜けた弾丸の跡をまさぐった。鉄の味がした。それから火傷するほどに熱い血流の迸りを遮るように舌の先を丸めて傷口全体に押しつけた。しかし血の奔流は俺の行為を嘲笑うように熱いものを吐きだし続けた。その熱いものが俺の中から流れ出す量と比例するように俺の体温は急速に下がりはじめた。俺の右手と左手は出来の悪いロボットのように不様な動きをしながら,もう掴みようもない有様の脳みそを掻き集め続けるのだが,眼下に集まった脳みそのタルトを眺めながら「俺は物心ついたときにはもう悪党であったし,今も悪党だ。そしてこれからも悪党であるに違いない」と考えながら「この苦境を脱したら,いい女を抱いて,いい肉を喰って,いい朝を迎えて,それから首を吊ろう,だから神様,今夜だけはお許しください。今夜だけは」と何度も何度も祈り続けた。

Innocent words by ash





Back

inserted by FC2 system